多様な就業ニーズに対応する
松下電器産業はよくこんなふうに言われる。たしかに「日本的」な一面を持っているのは事実だろう。例えば、同社はいまだ合理化らしい合理化は行なっていないし、いたずらに社員を関連会社に出向させるようなこともない。「松下電器の社員は松下電器で定年を迎える」という伝統が今も息づいているのだ。しかし、決して古くからの人事、雇用制度にしがみついているわけではない。バブル崩壊直後の「松下電器再生計画」、さらに九七年度にスタートした「発展二〇〇〇年計画」をすすめる中で、次々と新しい制度を導入している。
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それら諸制度を見ると、いくつかの方向性が見て取れる。その一つが社員に多様な選択肢を提供していることである。例えば、八八年に発足した「オープンチャレンジ制度」。これは、自分が希望するセクションへの異動が実現できるという制度だ。新たな人材を求めている部署が、社内の人材を対象に公募をかける。それに応募して選考にクリアすれば、上司の承諾がなくとも異動できるのだ。また、九六年にスタートした「変身大学」は、社員向けの養成学校だ。入学を希望して審査に通ると、給与をもらいながら勉強に専念できる。長ければ半年、一年に及ぶこともある。そして晴れて卒業すると、そこで学んだ知識や技術を生かせる部署に移れる。この二つは、自分がどのようなキャリアを形成していくのかを選択できる制度といっていいだろう。そして、もう一つ注目すべきは、九八年に導入した「全額給与支払い型制度」だ。これまで何度もマスコミで取り上げられているのでご存じの方も多いだろうが、こちらは給与形態を選択できるという制度である。
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